子供と水泳

水泳の効果(こどもの健全な成長のために)

水泳がスポーツの王様と言われる理由

キーワードは「3間減少」

 --三つの間抜け現象--

近年、子供達の遊ぶ空間や遊ぶ時間遊ぶ仲間が急激に減少しています。それにともなう運動能力や、運動量の低下が子供達の身体や心に及ぼす影響は計り知れないものがあります。
その事に対して多くの医学者や運動生理学者が警鐘をならしています。しかしこの問題は理論だけで解決できるものではありません。実際に子供達に遊びを通した運動の機会を与えることが必要なのです。この運動の機会として私たちは『スポ-ツの王様』といわれる『水泳』(水中運動)を提案しています。ここでは『水泳』がスポ-ツの王様といわれる理由をご紹介しましょう。

水泳を始めてカゼをひきにくくなった

冬でも薄着ですむようになった

水泳に適した水温は28~31° ですが、それでも体温より 8 ~ 9°℃低い上に、水は熱伝導率も大きいので体の熱放射も大きくなります。その結果熱を奪われることに対して体の防衛本能が高まり、寒さに対する適応力が強くなって風邪をひきにくくなるわけです。入会後ほとんどの方が風邪をひかなくなったと言うのもこの理由からなんです。

呼吸循環器機能が向上した

ぜんそくが改善した

喘息治療の運動療法として、水泳訓練が著しい成果をあげている事はご承知のこととおもいます。治療効果の理由としては陸上運動と違い、「水の中」で行う運動のため運動量が多いわりに、肺機能低下が低くそのため運動誘発喘息を制御する働きがあることがわかっています。

 

また胸部に水圧を受けるので、呼吸をするのに若干の努力を要します。そのため、胸部の発達が促進され、呼吸、循環器系の機能が著しく向上するわけです。

その他、湿度、温度が高くホコリが少ない環境、規則正しい呼吸法、重力の影響を受けない、など呼吸循環機能が向上する条件が揃っていることもその理由です。

 

かつてのオ-ストラリアのオリンピック水泳選手ドン・フレ-ザ-選手はもともと喘息に打ち勝つために水泳を始め、1956年・1960年・1964年のオリンピックで金メダルを獲得しています。また、1976年ミュンヘンオリンピックのオ-ストラリア水泳チ-ムでは、男子選手13人中5人が、女子選手15人中3人が喘息患者でした。

 

このように、喘息治療のために水泳をとりいれ、やがて水泳の力をつけながら喘息に打ち勝ち、ついにはオリンピックで活躍するまでになった人たちがたくさんいるのです。

水泳は成長期に適した障害の少ない運動

ケガが無いから安心

水泳は運動量が多い割には、陸上の運動に比べて障害が少ないといわれています。そのため、骨や筋肉が成長過程にある幼児や、逆に骨や間接がもろくなっている高齢者に適した運動だといえます。その主な理由の一つとして、水中では浮力が働くため体重負荷が陸上のおよそ10/1にまで軽減されます。つまり体重を支える脚、腰の筋肉や骨、間接に余分な負担をかけることなく、全身運動ができるからです。次に水泳は水の抵抗を利用した運動であることです。水の抵抗は非常にやさしく、マイルドで、しかも都合のよいことに、その人が出した力と同じだけの負荷が加わるようになっています。なので幼児は幼児なりの力で、大人は大人なりの力で自分で加減しながら泳ぐという運動ができるので、筋肉が未発達な幼児や小学生でも大いに奨励できる運動だといえます。 

水泳は陸上の4~10倍の運動量

短い時間で効果が高い

下の表は運動の種類によってどれだけの運動量になるかをしめしたものです。水泳が驚くほどの運動量があることがおわかりいただけるとおもいます。

100キロカロリ-を消費するのに必要な運動時間はテニスで18分必要なのに対し、水泳ではたった3分でよいということです。これは水泳が水中で行われるため、運動効率が極めて悪いのと、全身の筋肉をつかうので乳酸の消費量が極めて多くなるからです。

このことからも運動をする時間の少なくなった子供達にとっては、短時間で効率よくエネルギ-が消費されるため運動不足解消には最適であることがおわかりでしょう。

女性体重 
( 50kgの場合)

60分の運動
(Kカロリ-)

100Kカロリ-の
消費時間(分)
歩行(60m/分)

150

40
ランニング(5000m)

837

ジョギング

399

15
テニス

330

18
サイクリング

225

27
水泳

2,394

  3    

 

水の危険から身を守る

子供のころの経験が有るか無いかは決定的な差

毎年2.000~3.000人(1995年データ)の水死事故があるといわれています。そのうちの多くが泳ぎを知っていたら助かったかもしれないといわれています。また泳ぎを知らなくても、あと数分間「浮き身」(背浮き)ができていたら、ともいわれています。

目安としてはどんな泳法であれ200mを楽に完泳できることが溺れない泳力の目安と言われています。しかし水泳ができれば絶対溺れないという保証はありません。水死事故のほとんどが着衣状態だからです。着衣状態と水着状態では全く感覚が違います。

いしくらでは、この着衣水泳の体験教室も通常の教室の中で体験できます。着衣水泳の経験も溺れないための重要なポイントです。着衣水泳の経験がある場合とそうでない場合にも事故の確率が大きく変わるのです。

溺れた後の迅速な救急処置も大切なことです。少なくとも一人でも多くの人が「水」の怖さと同時に水の素晴らしさを身を持って知る事ができれば、このような事故が減っていくということは言えるのではないでしょうか。

神経系と知能の円滑な発達のために

「好きこそものの上手なれ」は本当だった

「明るく、健康で、聡明な子供に育ってほしい...」こんな気持ちは、古今東西を問わず、子を持つ親にとって共通の願いでしょう。明るく、たくましい人間に成長するために、遊びやスポ-ツは大きな役割を果たしています。子供は体を動かすことによって、色々なことを発見し、学び、情緒を豊かにし、満足感や達成感を得ることができます。

左図は、教育関係やスポーツ関係に携わる方なら皆さんご存知の「スキャモンの発達曲線」です。泳ぐ(体を動かす)という動作を支配する神経系の発育は筋肉や骨格などの他の発育速度に比較して非常に完成が早く、5才で、大人の約80%のに発達し、8~ 10才にかけてはほぼ100%近くにまで達します。 つまりこの年齢に達するまでに神経系の発達を助けるような刺激を与えることはとても大切なことなのです。

 

また水泳に限らず何か新しい技術をマスタ-しようとする時、その習得過程では脳と神経が複雑に、密接に関与していきます。勿論このときに働く神経は神経自身が勝手に働くのではなく、脳からの司令によって働いています。神経を支配している脳は色々なことを思考、判断し神経に命令を下しているわけです。

 

このようにひとつの運動を実現するためには、脳と神経が一体となって働き、その結果神経系が向上し物を考えたり判断したりと、知能の発達に良い影響を及ぼすという事がわかっています。例えば、子供の頃に覚えた自転車の乗り方は、大人になっても覚えていますよね。それと同じで、子供の頃に覚えた事は大人になってもしっかりと無意識の中に埋め込まれているのです。

 

「早期教育」という言葉は、このような事を背景に生まれた言葉です。

 

しかし、何故か近年、この言葉の本当の意味を「詰め込み主義」と混同して使っている方が多いようです。ここには、”自発”と”強制”という全く違った意味があります。小さな時から興味を持つものにはなるべく触れさせる事が子どもの成長には大切です。

 

好きなものでも強制したり、叱ったりすると逆に嫌いになりますよね。私たち大人は自分に子供時代があった事をすっかり忘れてしまい、「あれはしてはいけない、これもしてはいけない」とついつい言ってしまいす。実は、この時に、子供の持っている素晴らしい吸収能力の芽を知らず知らずに摘んでしまっているんです。指導者の力量にも依存しますが、いずれにせよ「好きこそものの上手なれ」ではないでしょうか。

子供と水泳まとめ

遊びが子供を成長させる

ヒトはもともと水の中から生まれてきた生物といわれています。またヒトの体の70%が水でできています。水を飲まなければヒトは命さえ絶たれてしまいます。ヒトは大昔から水に育まれて生きて来たのです。

 

そして今またその「水」の大切さが見直されてきています。水泳はその人間に不可欠な「水」を使ったスポーツであることで、この他にも、精神的な癒し効果・健康増進や病気の治療の面などにおいては数多くの副次的効果があるといわれています。

 

先にも述べたように、今の子供たちにとって①塾通いが増えた②テレビゲームの発達や少子化などに影響され近所付き合いが薄れ、遊び仲間がいない③道路が危険などの理由で私達大人が歩んできた子供時代とはかけ離れたものになっています。

 

これらの不健全な生活の結果、子供の心身的発育にも大きな悪影響を及ぼし、身体的には心臓や、血管の機能の発達が妨げられ、若年性高血圧症などの早老現象が今日の青少年の一部にみられるようになりました。

 

また精神面では、昔は「遊び」によって得ていた対人力・協調性・自立性・社会性などが失われつつあり、それらによる事件もすでに増加の一途をたどっています。

こうして未熟のまま大きくなってしまう子供たちに私達大人が、できることは、いま子供達に、少しでも早い時期に運動や遊びの場、疑似体験ではなく本当の原体験の機会をあたえてあげることではないでしょうか。

 

そしてスイミングクラブはその子供たちのために日々「運動と遊びの場」を提供できる数少ない場のひとつなのです。

 

最後までお読み頂き本当にありがとうございます。

これまで書いてきたことは一般にはご存じ無いこともあったと思います。でも業界ではごく普通なことなのです。

 

次の章では現場での実体験からもっと掘り下げたお話をしたいと思います。

下の章もお時間が許せばぜひご一読ください。

水泳の驚くべき効果